東京ほくと医療生活協同組合 王子生協病院
当院ではこの間、パンデミックによる健康の社会的決定要因の変化を意識した取り組みを進めています。
昨年春にはCOVID-19の院内発生による病棟職員の一斉自宅隔離を経験し、平時と有事における職場メンタルヘルス対策の必要性を痛切に実感しました。これを受けて職員チームでは、セルフケアやラインによるケアといった職場メンタルヘルス対策の基本から学び直し、特にパンデミック下のメンタルヘルスについて学習し、感染対策委員会や労働安全衛生委員会の取り組みと住み分けたHPH委員会の役割を検討しました。
もとより職場チームでは「毎日出勤するだけでどんどん健康になってしまう職場づくり」を活動目標にしていたので、まずは「出勤するだけで勝手にセルフケアの知識が身についてしまう職場づくり」に取り組みました。チームメンバー各自が関心のあるセルフケアの方法について情報をまとめ、13種類のセルフケア・メニューを用意しました。それをトイレの個室や手洗い場など誰もが利用するスペースの「つい目についてしまう」場所に、「用を足している間に読み終えてしまう」情報量にして1枚ずつ掲示し、2週間ごとに掲示メニューをローテートさせています。
これにより、半年ほどかけて13のセルフケア・メニューを「出勤するだけで勝手に」目にすることになる環境を作りました。掲示を見た職員からは、内容の多様性、見やすさ、実用性などについて肯定的な感想をいただいています。それでもまだ院内ではHPH委員会の認知は浸透していないので、職員のニーズや実践しているコーピング方法などの聞き取りも随時行って情報発信するなど、職員との双方向性を重視して取り組みを計画しています。
患者チームは、外来予診票にSDHスクリーニング項目を盛り込んだり、コロナ禍で懸念される飲酒問題などについての情報提供用ハンドアウトを作成したりしています。
地域チームは、近隣に保育園や小学校など子ども関連の施設が密集しているという地域性や、コロナ禍による女性・非正規雇用者の経済困窮や家庭内暴力の潜在的リスク増加といった時事性に注目し、こどもの貧困・こどもの健康格差問題に取り組むために、この分野の学習や地域診断を改めて行い、地域の関係機関へのインタビューをしながら顔の見える関係性構築や目的意識の共有を進めています。数か月で委員会メンバーが変更することもあり、HPHとは何か、SDHとは何かといった学習を繰り返しながらゆっくり前進中です。
報告:佐野 康太(王子生協病院 医師)
NEWSLETTER No.19 JAN 2022