鳥取医療生活協同組合 鳥取生協病院
「地域に出向いた食料無料市の取り組み」
鳥取生協病院が加盟している鳥取県民主医療機関連合会(以下、鳥取民医連)では、医療生協組合員や県労連・医労連、県生協、公営団地の自治会などと協力しながら、地域の公営住宅団地へ出向いた食料無料市を開催しています。2023年4月15日には、第5弾となる食料無料市を開催し、合計180セットの食材セット(米2kg・即席麺やそば等・カレールー)配布と、希望する方には野菜やその他食材、マスクやトイレットペーパー・おむつなどの生活雑貨の配布を行いました。
公営団地に出向く食料無料市が始まった経緯は、2021年メーデーに実施した食料支援企画の経験からでした。鳥取民医連ではコロナ禍の地域の状況を把握しようと、2020年末から県内4市の公営住宅を対象に困りごとアンケートの配布を行いました。アンケート結果からは、公共料金の支払いに困っていたり食費を削っていたりする生活実態が明らかとなり、地域には潜在的に生活に困っている方がいることがわかりました。新たに地域の困っている方々と繋がることを目的に、2021年メーデーに鳥取医療生協の駐車場で100セットの食材を準備して食料支援企画を開催しましたが、当日来場されたのは10数人でした。
この結果を受け、「困っている人がいないわけじゃない。でも、世間体を気にする人が多く自己責任論も根強い。会場までの移動手段もない。地方でのアウトリーチは試行錯誤が必要だ」と振り返りを行い、公営住宅に出向いた食料無料市の取り組みを始めることになりました。
4月15日の無料市当日は、実行委員以外にも新入職員や看護奨学生も加わり、総勢82名の体制で、開催団地の無料市対応や開催団地以外のお届け希望者等への食料配布を分担して行いました。開催団地では、集会所をお借りし、食料配布以外にも血圧測定のブースや相談コーナーを設置し、希望者に食材セットや野菜などを玄関まで届ける「お届け隊」も編制して来場者を迎えました。
公営団地に出向いたアウトリーチの取り組みは、無料市をきっかけに当院の無料低額診療事業を利用することで受診に至ったケースや、民医連職員が同行することで生活保護制度の利用に繋がったケースもあり、日常の医療活動の中では繋がることがなかった生活困窮者との新たな繋がりがつくれる貴重な機会となっています。また、無料市利用者の中で「本当に困った時の相談先が知りたい」という意見が多く聞かれており、地域の中での繋がりづくりの重要性と、繋がり続けることの大切さを感じています。引き続き取り組みを継続していく中で、他団体や自治体等との連携も模索していき、医療生協組合員活動の優点を活かした地域づくり・健康づくりに繋がる取り組みになればと考えています。
報告:横山 洋介氏(鳥取生協病院 事務次長)
NEWSLETTER No.23 JUNE 2023