公益財団法人淀川勤労者医療協会西淀病院
「HPHアプリのご紹介」
今年3月に行われたスプリングセミナーで当院の電子カルテ内の「HPHアプリ」(図1)をご紹介したところ、多くの参加者から「HPHアプリについてもっと詳しく教えてほしい!」とのお言葉をたくさんいただき、HPHアプリについてご紹介させていただきます。
皆様の職場もおそらくそうだろうと思われますが、当組織は以前から地域住民、患者、職員へのヘルスプロモーション(HP)活動が当たり前のように行われてきております。そのHP活動をどうしたら可視化できるか、どうしたらその成果を評価できるかと常々考えておりました。
そこで注目したのが入院患者に必ず聴取する患者情報基礎情報の活用です。看護師が電子カルテに入院患者情報を入力しますが、その情報を活かせておりませんでした。入院患者情報のうちの4つの項目(飲酒量、喫煙歴、栄養状態、運動)をHPHアプリに入力し、あらかじめ決めた介入対象者の条件を上回った患者の電子カルテ上にHPH介入対象者であることが表示されます。あらかじめ決めた介入方法でHPHメンバーの各専門職が入院中の対象者にHP活動を実践し、実践したらHPHアプリに入力するといった具合です。このアプリを作るまでは、HPHコアメンバー、電子カルテシステム担当者、管理職を巻き込み、担当副事務長を中心に実施計画書を作成し、Who When What Howを具体的に考える定例会議(図2)を実施しながら約1年の準備期間を要しHPHアプリが誕生しました。
2021年4月からは、上記4つの項目にさらに2つの項目(健康の社会的決定要因SDH である「経済的困窮」と「社会的孤立」) に対しても介入を開始しました。入院患者の問診票に「医療機関で用いる患者の生活困窮度1)」の項目「この1年間で家計の支払いに困ったことがある方、この1年間に給与や年金の支払日前に暮らしに困ったことがある方」を経済的困窮者、「友人・知人と連絡する機会がない方、家族・親戚と連絡をする機会がない方」を社会的孤立者とし、経済的困窮者にはMSWが介入するようになっております。
今後の課題としては、HP介入後の評価をすること、入力作業をより効率的にできるソフトの開発、コロナ禍であり社会的孤立の介入が実施できておらず、コロナ禍だからこそやらなきゃいけないHP活動を実践すること、入院患者だけでなく外来患者や地域住民へ広くHP活動の介入を実践していこと、HPH委員だけでなく職員のだれもがHPHアプリにアンテナをはること、などまだまだ課題が山積みですが、継続して実践していくことが大切であると考えております。
参考文献1)「医療機関で用いる患者の生活困窮評価尺度の開発」
西岡 大輔 上野 恵子 舟越 光彦 斉藤 雅茂 近藤 尚己
報告:野口 愛(公益財団法人淀川勤労者厚生協会 医科診療所・介護事業所グループHPHコーディネーター 医師)
NEWSLETTER No.20 MAY 2022