利根保健生活協同組合 利根中央病院
「高崎中央病院での『性的マイノリティに関する学習会』」
皆さん、初めまして。群馬県にある利根中央病院 総合診療科で医師をしています、比嘉研(ひが けん)と申します。今回ご紹介するのは、出向先の高崎中央病院HPH委員会が主催し、私が講師を務めた『性的マイノリティに関する学習会』です。
2023年6月から毎月1回、1時間の学習会を全3回のシリーズで実施しました。対象は全職員(約200名)、実際の参加者は各回30名ほどでした。
第1回は「LGBTQ」「SOGIE」「カミングアウト」など言葉の説明から始めました。アウティングは絶対にしてはならないと伝えました。
第2回。人口の約9%(左利きの人と同程度)いると言われる性的マイノリティに、ほとんどの職員は接したことがありません。それはなぜなのか。差別・偏見が生まれる構造やスティグマ、さらにそれらから生じている健康被害について話しました。後半には「病院ではどのようなことが起こっているだろうか」を参加者で話し合いました。「入浴介助の担当を代えて欲しいと思っているかもしれない」など、実際に医療現場で働いているからこそのリアルな意見が多く挙げられました。
「患者が性的マイノリティかどうかを知らなくては対応のしようがない」という発言がありましたが、「卵と鶏のどちらが先かの議論になってしまう。まずは医療者側が信頼してもらえるような態度を身につけるべきではないか」と回答しました。
第3回はこれまでの講義と議論を振り返り「当院でどのような取り組みができるか」を話し合いました。出された案を「時間・お金」の軸と「有形・無形」で分類しました。時間もお金もあまりかからずすぐに取り組めるものは呼称(無形)、問診票(有形)と認識できました(その後、性別欄のない問診票の作成・運用開始という成果がありました)。誰でもトイレの設置や入院の部屋分けなども挙がりました。時間やお金はかかりますが、文化が醸成・浸透した暁には取り組んでいけるでしょう。
参加者のアンケートに、単発ではなく複数回の学習会だったことでより深い学習や議論ができたとの感想があり、講師としての実感とも重なりました。
最後に、私がなぜ性的マイノリティの問題に取り組んでいるのかを述べます。
にじいろドクターズという団体主催の学習プログラムを受講し、性的マイノリティを取り巻く様々な困難・問題を知りました。その困難や問題は決して「性的なもの」ではなく、誰もが等しく守られるべき「人権」と「アイデンティティ」の問題でした。誰かの自由や尊厳を(無自覚かつ構造的に)奪っている状況を、例え蟻の一穴であっても変えていきたい。これまで意識せずに行ってきたヘルスアドボケイトとしての役割を自覚しました。そのために自分がやれること、やるべきことを見定めている途上です。ぜひ一緒に取組みを進めていきましょう。ご意見・ご感想、ご相談などをぜひお寄せください。
E-mail: higa.ken.x#gmail.com *#を@に変えてお送りください。
「2020年版HPH基準」
基準2 サービスへのアクセスの保障 2.3.1. 2.3.2. 2.3.3.
基準3 住民中心のヘルスケアおよび利用者参加の促進 3.1.3. 3.1.5. 3.2.1. 3.3.3.
基準4 健康的な職場、健康的な環境づくり 4.1.5.
報告:比嘉 研氏(利根保健生活協同組合 利根中央病院 総合診療科)
NEWSLETTER No.26 JUNE 2024