公益社団法人地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター
「キラリと光る地域振興協会25病院の活動~HPHアンケートの結果より~」
地域医療振興協会は、地域医療を支援し、それによって地域の振興を図ることを目的に設立されました。日本全国の地域、そこに住む人々、そして医療に携わる医療人の三者が幸せになれる未来を作っていくため、様々な活動を行っています。
昨年度、地域医療の質向上を図る一環として、協会が運営する25病院を対象に、ヘルスプロモーション活動(以下、HPH活動)の実態調査を行いました。本調査では、あえて「業務か?HPH活動か?」という線引きはせず、通常業務の中や延長線上にある、患者・利用者さんや地域の方々、そして職員の健康規定要因や生活環境をより良くしようと考えるプロセスやサポート、全てをHPH活動に含めることとしました。
その結果、25病院全施設から、それぞれの地域特性、病院の規模や機能、ニーズに合った創意工夫にあふれる活動が寄せられました。その一部を2020年版HPH基準に沿ってご紹介します。
基準1:HPHへの組織的取組の表明
台東区立台東病院、あま市民病院では、運営方針の一つにヘルスプロモーション病院としての活動を掲げ、院内外に広く周知しています。そして、職員がそれを意識して自発的な行動につなげるためのワークショップを開催し、それを基に地域でのフレイル予防や病院祭、禁煙支援、認知症カフェ等のHPH活動を行っています(基準3・4にも該当)。
基準2:サービスへのアクセスの保証
石岡第一病院をはじめ複数の病院で患者相談室を設け、子どもから高齢者まで経済的な問題を含む療養上、生活上の様々な相談に応じています(2.1.1~2&2.3.3)。また東京ベイ・浦安市川医療センターでは、病院紹介や役に立つ健康情報を分かりやすく住民や施設利用者に届けるためWeb通信を発行し(2.2.1~5)、遠方の方でも受診できるよう複数の科においてオンライン外来を開始しました。妊婦さんの安全を担保し安定した出産前教育が行えるようオンライン母親学級も開催しています(基準2.3.1~3)。
基準3:住民中心のヘルスケアおよび利用者参加の促進
越前町国民健康保険織田病院では地域の障害児、発達・学習面で支援が必要な子どもに対しリハビリと療育を実施しています(基準3.1.4)。公立久米島病院では、新入職員の研修に島の自然、文化、歴史や生活環境、葬祭の儀式等について学ぶプログラムを盛り込み、共に働く仲間や島民を尊重し協働する大切さを知る機会としています(3.3.2~4)。
基準4:健康的な職場、健康的な環境づくり
日光市民病院ほか多くの病院で、スタッフのメンタルヘルスケアに注力し、こまめな短時間面談や昼食会等を行うほか(4.1.1&6)、西吾妻福祉病院では、地域住民と職員に向けて院内にトレーニングマシンを設置・開放し、職員の腰痛予防や地域の方と共にリラックスした時間を過ごす空間として役立てています(4.2.5)。台東区立台東病院・あま市民病院では、職員の健康ニーズを把握するための食事・生活習慣調査を行い(4.1.1)、それに基づく食環境整備や(4.2.6)、禁煙支援(4.2.7)、スポーツイベント(4.1.1)を開催するほか、協会内外の研究機関と連携しその評価を行っています(5.4.3にも該当)。
基準5:より広い社会におけるヘルスプロモーション
公立黒川病院、市立恵那病院では、地域の公衆衛生組織と連携し、認知症サポーター養成や呼吸器教室を開催するほか(5.1.2~4&5.2.1~2)飯塚市立病院ほか多くの病院で糖尿病教室等の市民向け講座や教室を開催しています(5.4.4)。東京北医療センター、横須賀市立うわまち病院等の施設では医療の質向上に向けた研究活動を支援、推進しています(5.4.1&5.4.3)。
その他、ここでは紹介しきれない多くの活動が寄せられました。それらの活動や調査の詳細については、協会およびヘルスプロモーション研究センターHPで紹介していますので、ぜひご覧ください。本稿が、みなさまにとって新たな活動のヒントとなり、推進を後押しする一助となれば幸いです。
※本調査は、京都大学大学院医学研究科医療経済学分野との共同研究として実施しました。
報告: 川畑 輝子氏
(公益社団法人地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター 研究員・管理栄養士)
NEWSLETTER No.23 JUNE 2023