倉敷医療生活協同組合 水島協同病院
水島協同病院の対話を起点にした職員育成の取り組みについて
水島協同病院は、病床282床・職員常勤454名を擁する中規模病院として、「いつでも、だれもが、安心してかかれる医療を追求します」という理念のもと、全人的医療や無差別・平等、地域医療を担う医療人の育成に取り組んでいます。
病院の理念は、医療生協の病院でもあり、地域のヘルスプロモーションを推進するものですが、一方で近年、コロナ禍を契機に職員間の交流が減り、理念への共感が薄れること、またベテランと若手の間に医療に対する意識ギャップが広がることが課題となっていました。さらに、管理職になるのを避ける傾向や、プロフェッショナリズムが希薄な若手職員が増えたことで、理念を継承する職員育成の難しさが顕在化していました。
課題の本質:「関係の質」の低下
当院では、この状況の本質を「関係の質」の低下にあると捉えました。職員同士のやり取りが「報・連・指示」に偏り、思いや葛藤の共有がないため、会議で意見が出ても結局は「これまでどおり」に落ち着いてしまう状態が続いていたのです。この見立てを踏まえて、ダニエル・キムの成功循環モデルを参考に、関係の質が思考の質・行動の質・結果の質へと連鎖するという考え方を導入しました。
つまり、職員育成を“スキル”だけで捉えるのではなく、まずは職員の内面や関係性に働きかける必要がある—そのために「対話」が要となると整理しました。
変革の設計:「対話から始める」
そこで当院は、変革を「対話から始める」方針で進めました。具体的には、組織変革の取り組みを援助している企業と契約して次のプロセスを進めました。
全職員アンケート・幹部ヒアリングにより、現場の実感と課題を可視化「Proud & Thanks」として、感謝と誇りを言語化し、場の空気を和らげる取り組みを実施
OST(Open SpaceTechnology)という手法を用い、職員がテーマを持ち寄って自律的に対話できる場を月1回、水曜午後の3時間半で設定しました。管理職を中心に半年間OSTを続けたのちに、全職員対象に希望者が参加できる場としました。
ここでのポイントは、対話を「一度きりの研修」ではなく、日常に根付く“関係を変える仕組み”として設計したことです。対話の積み重ねによって、聴く・語るが許される心理的安全性をつくり、職種や役割を超えた理解と協働を育てることを目指しました。
突破口:医師の継続的参加
取り組みの大きな突破口は、医師の参加でした。院長の呼びかけに応え、多くの医師が継続的に対話の場に関わりました。医師が「聴く」「語る」姿勢を示すことで、「自分も話してよい」という空気が生まれ、発言が職種横断的に広がっていきました。OSTやチェックアウト(振り返り)の場では、感謝や尊敬の言葉が増え、「関係が変わってきた」という実感が共有されるようになったと思います。
現場起点の改善が生まれる
対話は理念の再確認にとどまらず、結果として業務改善にもつながりました。現場起点の改善提案が活発になり、業務効率化や連携の質向上といった副次的成果も生まれています。対話によって意識が変わり、行動が変わり、結果として会議の内容や職場の改善に結びついたことを、当院は大きな手応えとして受け止めています。
人材育成:内製化のためのファシリテーター育成
現在は、院内ファシリテーターを育成し、OSTの自主開催を続けています。対話の技術や場づくりを外部依存ではなく院内で再現できるようにし、「変化を起こす人材」を育てることを目指しています。
外部での学びを活用しながらも、最終的には「変化を自分たちで起こせる状態=内製化」を目標にしている点が特徴です。理念を継承する“仕組み”が病院の文化として残っていくと考えています。水島協同病院は、対話を起点にした職員育成を通して、理念が現場で生きる状態を目指しています。今後も、対話による「関係の質」を改善する文化を継続し、職員が互いを尊重しながら成長できる組織づくりを進めます。
報告:山本 明広氏(倉敷医療生活協同組合 水島協同病院 院長・医師)
1750-0037 倉敷医療生活協同組合 水島協同病院
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No.33
SEP.2026





